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「どう? いいでしょう、この魚」
虐めたくなるでしょう
ヒィーヒィー泣かせて、自尊心をズタズタに切り裂き、狂う寸前まで追い詰めたくなるでしょう
「なかなかの一品だね。よしきさんが推すだけのことはある」
ペロリ
唇を舐めた旦那様の顔が歪む
僕は好き
露悪趣味を持つ男の歪んだ本性がさらけ出され、その表情を見て怯えながらも期待に胸を膨らます観客も、みんないい
油いっぱいのバケツに浸かる棒を一本取り
「はい。先ずはコレをどうぞ」
男に手渡した
くるり
振り返って店先に集う顔を見渡す。ざっと二十名くらい
スーッと腹の奥まで息を吸い込み
「皆さん、今からアクツ堂鮮魚店名物、魚のさばきをご覧にいれます。買い付けご希望のお客様はさばきの後、お申し付け下さい」
舞台を整えるため、魚の周囲に客をお招きする
ガチャン
魚を仰向けにして、手首を鎖つきの手錠で拘束したら上半身を起こすように柱に繋ぎ、両足首を男衆がしっかり掴む
人の眼、眼、眼
好奇と残虐に満ちた観客の表情に怯えない魚はいない
怖いよね
酷いよね
助けて欲しいよね
キミが何をしたかは知らないけど、喧嘩をふっかける相手を間違えちゃったね
魚くんが可哀想すぎて
興奮しちゃう、僕
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