魚の躾

5/7
前へ
/93ページ
次へ
「どう? いいでしょう、この魚」 虐めたくなるでしょう ヒィーヒィー泣かせて、自尊心をズタズタに切り裂き、狂う寸前まで追い詰めたくなるでしょう 「なかなかの一品だね。よしきさんが推すだけのことはある」 ペロリ 唇を舐めた旦那様の顔が歪む 僕は好き 露悪趣味を持つ男の歪んだ本性がさらけ出され、その表情を見て怯えながらも期待に胸を膨らます観客も、みんないい 油いっぱいのバケツに浸かる棒を一本取り 「はい。先ずはコレをどうぞ」 男に手渡した くるり 振り返って店先に集う顔を見渡す。ざっと二十名くらい スーッと腹の奥まで息を吸い込み 「皆さん、今からアクツ堂鮮魚店名物、魚のさばきをご覧にいれます。買い付けご希望のお客様はさばきの後、お申し付け下さい」 舞台を整えるため、魚の周囲に客をお招きする ガチャン 魚を仰向けにして、手首を鎖つきの手錠で拘束したら上半身を起こすように柱に繋ぎ、両足首を男衆がしっかり掴む 人の眼、眼、眼 好奇と残虐に満ちた観客の表情に怯えない魚はいない 怖いよね 酷いよね 助けて欲しいよね キミが何をしたかは知らないけど、喧嘩をふっかける相手を間違えちゃったね 魚くんが可哀想すぎて 興奮しちゃう、僕
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加