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年に三回、色街では売上検査がある
公衆トイレで用を足す気軽さで、この街のどこがで欲望を吐き出す客。彼らに必要なのは繊細なガラス細工ではないし、取り扱い注意の必要な品でもない
必要とするのは欲望を吐き出す、器。
器の中には自分を売り込めない要領下手もいる。稼ぎたいのに稼げない、そんな器の救済措置としてあるのが菊提灯
基本は器
提灯は目立たせるって意味。器をどうやって目立たせるかは店の自由、自由なのだから、調達しても問題ないよね?
「ねえ、アクツ」
僕の低く通る声が店内に響く
好意に満ちた視線が美しい僕に注がれた。悠然と微笑む僕に、微笑み返してくる彼女とヒモとは違う、警戒の眼差しを向けてくるアクツに僕、おねだりしちゃう
「提灯の納品、今日だったよね」
ひくっ
アクツの唇の右は上がり、左はそのまま。悪党の悪党らしい唇の動かし方をしたアクツの、憂鬱そうな表情は無視
「やっぱりさ、大きい方がいいな。目立ちそうだし」
『大きい』に含みを持たせた僕はほんの少し、身を乗り出す。僕の視線を意識したヒモはポケットに手を入れ、ズボンのシワを伸ばした
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