菊提灯

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僕は特等席に陣取るアクツの隣に座った。もちろん、ドーナツクッションは敷いてある 「きたね、器」 アクツ堂の器は入荷したばかりの両性具有魚。素人の男を刺身にするのは客ではないし、アクツ堂の人間でもない ふふ、ふふふ 成り行きを見守る観客の眼に怯え、アクツに恐怖し、隣に座る僕を見て救いを見つけた顔をするのは同じ。どの魚も、僕なら助けてくれそうだと思うらしい だから僕は、期待に応えてあげる 美しい瞳に薄く膜を張り、不憫な・・・・・・って表情してから、アクツを見つめ 「さっさと始めよう、待ちくたびれちゃった」 菊提灯のショーをおねだり。僕、好き。僅かな期待を笑顔で裏切った僕を見る、魚の憎悪を燃やす眼 「身の程を弁えろ」 憎悪を僕に向けた魚の腹をアクツが蹴った。ピチピチ跳ねる魚の髪を掴み《ペッ》唾を吐きかけ、小さなダンコンをグリグリ、靴先で踏み潰すアクツの悪党っぷりが素敵すぎて僕、胸がドキドキしちゃう 声を殺し泣く魚を男衆が立たせた 「手袋を嵌めろ。言われなくてもコレをどうするかは、分かるな」 はーい、先生。 腹の中をしっかり冷やすため、長さ40cm、茎の太さ22cm、亀の頭部23cmの氷の彫刻を突っ込めばいいと思いまーす! 「出来ないならお前にするだけだ。三秒待つ、さっさとやれ」 急がせるのには理由がある。刺身は鮮度がいのちだ、氷が溶けたら菊遊びは終了 ここにいる全員が楽しめるよう、気付け薬も用意してある 生贄が生贄を罰したあと、素人を虐待した罪で罰せられる両性具有の動向をじっと、見守る観客の眼が氷のダンコンを掴んだ魚を映し、愉しげに光った
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