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「本当に、美しいわ……」
私の喉元を優しく撫でる麗しい指先に脳は麻痺を起こす。貴女をおいて、この世に美しいものなど存在しないと、私は溜息を落とした。
「サファイア…エメラルド……」
指先は喉元から胸へと滑り落ちる。
「知ってる?ハーフサイダーって言うのよ。あなたみたいな美しさを」
知らない訳ではない。けれど、輝きの違う左右の瞳が煩わしく、私はあの場所を飛び出した。
「どちらも持ち合わせているという事なの。卑下しないで、決して半分でしかないなんて思わないで…」
飛び出したとして知恵も知識もないのだ。彷徨うとしても狭い世界で、私は彼女、と彼に出会った。
「あたしたちは運がいいわ。ねぇ、貴方…」
「ああ…僕たちの宝物だ」
彼女らは何も知らない私に、身に余る官能と、気付きを与えてくれる。
「君は本当に、美しい……」
例えるなら、先程まで私を撫でていた麗しい指先を、本来守っているのは、このたくましい胸なのだろう。
私にはない、性別における愛の形は美しい。
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