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わたしは固まった。有希というのは、わたしの名前だ。啓太はわたしの名前について、何かしゃべっていたのだろうか。
「ばあちゃん、名前知ってるなら、さっさと教えてくれよ!」
だが、啓太も文句を言っているところを見ると、どうも、そういうわけではないらしい。とすると、いったい、どういうことなのだろうか。
「あらあら、ごめんなさいね。言わなかったかしら」
啓太はむすっとした顔をしている。
「それはいいから、例のロボット持ってきてよ。地下室、行ってくるから。コイツ、つかまえてないと、にげられそうだし」
わたしには、まだ何のことだか、わからない。
「はいはい。ちょっと待っててね」
おばあさんがおくの部屋へ入って行く。啓太はわたしのうでを引っ張ったまま、おくの部屋へ連れて行く。本当に、居心地悪いし、やめてほしいのだけれど。
ただ、わたしはふと気づいた。そういえば今、啓太はロボットと言った。ということは、やはりこのロボットのかたわれは、啓太が持っているのだ。
どうしよう。このままでは、啓太が思うツボだ。
「お前さぁ」
啓太はわたしに話しかけてくる。
「自分がふた子だって、言われたことない?」
いったい、啓太は何を言っているのだろう。わたしはふた子だなんて聞いたことない。もし、ふた子なら、そのかたわれはどこにいると言うのだろうか。
「オレはずっとふた子だって、言われ続けてきたんだ」
啓太はふた子なのか。ということは、啓太に似たような人がもう一人いるか、まさか、この人、啓太じゃないのだろうか。
おばあさんがもどってきた。手にはわたしが持っているのと似たようなロボット。
「サンキュー」
啓太はそれを受け取ると、わたしのせ中をおした。
「じゃあ、地下へ行こうぜ」
いったい、何をしようと言うのだろうか。このロボットのヒミツがわかるのはかんげいだが、啓太と二人になるのは、あまりうれしくない。
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