はじめに

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はじめに

あら、いらっしゃい。 私の名は、あなたがたには「清少納言」て呼ばれているみたいね。 私の本名は秘密よ。何故なら、当時は 当時は肉体につけられた呼び名ではなく、 魂つけられたもの、という価値観の元に名付けられたから。 今回は、 マニアックな物書き気取り「大和撫子」からお願いされて来てみたわ。 源氏物語の『朧月夜の君』について。 この彼女の本音に迫ってみるわね。 え?いきなり私が出て来たらおかしい? …そうよねぇ、確かに。 私と紫式部はライバル・犬猿の仲、とか言われているようだし。 そう感じても仕方無いわね。 では最初に、私と紫式部の関係の真相を軽く話すわね。 私がお仕えしていた主は、中宮・定子様。 あちらがお仕えしていた主は中宮・彰子様。 つまり、主と主の父君が「政治的にライバル」だったのね。 そして私の代表作「枕草子」がヒットした後に、 彼女が頭角を現してきた訳。 更に、私が宮仕えを辞めた後に、彼女は宮仕えを始めているわ。 つまり、直接の面識は無かったのよ。 あ、そうそう。 お互いについて酷評を書き記している! と言う点についてだけれど、整理するわね。 誤解の原因である記述、「枕草子」に藤原宣孝について 「…ど派手でセンスない服装…」 みたいに書いたけれど、 あれは私がそう思う事を、ただ素直に書いただけよ。 彼はずっと後に紫式部の夫になったみたいね。 そんな事、当時の私には分かる筈ないじゃない? 彼女はその事、かなりカチンと来たみたいだけどね(苦笑) 余程腹に据えかねたのか「紫式部日記」に私の悪口書いてるわ。 「清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人。 さばかりさかしだち、真名書き散らしてはべるほども、 よく見れば、まだいと足らぬこと多かり」 今風に訳すと、 「清少納言は、自惚れが甚だしい人。 超偉そうに漢字なんか書きまくってるけど、 よく見ると、まだまだ未熟だし」 こんな感じかしら。 彼女は「もののあわれ」を重んじる人だから、 男と対等に渡り歩く私と性が合わないのよね。 彼女は私をライバル視してたみたい。 でも、私は全然気にならないわ。 だって作風が全く違うじゃない? 価値観も物事の感じ方も、趣味も…。
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