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「目玉焼き半熟じゃないからヤダ。野菜はいらない」
「黙って食べなさい。あんたじゃなくて朔の体のための朝食なの」
翌朝も、やっぱり悪魔だった。
けれど朔の顔をした生意気な生き物とのやり取りは、不思議な事に、私の中にしっくり来ていた。邪悪な感じのしない悪魔を、少し可愛いとすら思えてしまう。
「担任の中沢は冴えないオッサンだが女の子のレベルは高くて、3年2組はなかなかいいコミュだね」
「絶対に妙な事しないでね。朔の体なんだから」
「JKとイイ事するのも?」
「当たり前でしょ」
「1回くらい」
「だめ」
「それってジェラシー? JKに」
「悪い?」
思い切り睨みつけると悪魔は眉尻を下げて笑った。
「ちょっと僕の恋心が疼いちゃったけど。そっか、まさかあんなガキをね」
「朔に言わないでよ」
「そんな事に悪魔は時間を割かないからご心配なく。じゃあ学校行ってくる」
「ねえ、待って、あんたは朔の記憶とかは読めるのよね。あの子は……」
ああ、と振り向いて悪魔は笑う。
「葉月ちゃんの事、朔がどう思ってるか知りたい? じゃあ今夜は早く帰っておいでよ。たっぷり教えてあげるからさ」
悪魔を見送った後も鼓動のざわつきが止まらなかった。仕事中もずっと。
―――朔の本心。
ジワリと不安が募る。
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