もう半分の君と

9/21
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「目玉焼き半熟じゃないからヤダ。野菜はいらない」 「黙って食べなさい。あんたじゃなくて朔の体のための朝食なの」 翌朝も、やっぱり悪魔だった。 けれど朔の顔をした生意気な生き物とのやり取りは、不思議な事に、私の中にしっくり来ていた。邪悪な感じのしない悪魔を、少し可愛いとすら思えてしまう。 「担任の中沢は冴えないオッサンだが女の子のレベルは高くて、3年2組はなかなかいいコミュだね」 「絶対に妙な事しないでね。朔の体なんだから」 「JKとイイ事するのも?」 「当たり前でしょ」 「1回くらい」 「だめ」 「それってジェラシー? JKに」 「悪い?」 思い切り睨みつけると悪魔は眉尻を下げて笑った。 「ちょっと僕の恋心が疼いちゃったけど。そっか、まさかあんなガキをね」 「朔に言わないでよ」 「そんな事に悪魔は時間を割かないからご心配なく。じゃあ学校行ってくる」 「ねえ、待って、あんたは朔の記憶とかは読めるのよね。あの子は……」 ああ、と振り向いて悪魔は笑う。 「葉月ちゃんの事、朔がどう思ってるか知りたい? じゃあ今夜は早く帰っておいでよ。たっぷり教えてあげるからさ」 悪魔を見送った後も鼓動のざわつきが止まらなかった。仕事中もずっと。 ―――朔の本心。 ジワリと不安が募る。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!