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「しっかしよ~。
なんで、俺が田中と同じピエロのメイクしなきゃ、いけないんだろうな」
「仕方ないでしょ。上田下田さん、俺と入れ替わりなんだから。
それにしても、こうして一緒にメイク落としてると、俺と上田さんって漫才コンビみたいっすね」
「やめろよ。俺の相棒は下田だけだぜ。なんたって俺たちはよ~」
「はいはい。一心同体中年体だ、って言うんでしょ。
まあ、その通りですけどね。はははっ」
俺たちは、鏡の自分たちを見ながら笑った。
そこへ、マジシャン半田が楽屋に入ってきた。
「上田下田ちゃん、おつかれ~! 今日、良かったよ!
お客さん、大喜び。
俺のこと、一流マジシャンだ、ってさっ。
半分の体が、どうやってウロウロするんだ!? って、お客さん驚いちゃってさ。
どんなトリックなんだ!? って、こぞって聞かれたよ~!」
「で、なんて答えたんだよ?」
「タネも仕掛けもありません。って答えたさぁ~!」
「ははっはは!! 違いねぇや~」
俺たちは全員で笑った。
え? 下田が笑ってない。って?
あ~、あんたにはわかんないだろうなぁ……。
けどさ、俺にはわかるのよ。
ほら、ちょっと足の指が動いてるだろ?
こんなので、よくわかるな! って?
そりゃあ~、なんたって俺たちは、上の体半分と、下の体半分。
一心同体の中年体、だからなぁ。
「なっ? 下田」
(終)
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