日常①

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「おかえりー」 仕事終わり、待ち合わせ場所はいつも豊かな香りが鼻腔をくすぐるカフェの前だった。 私の仕事終わりの時間に合わせて車で迎えに来てくれる彼は、いつもそこで携帯でゲームをしながら待っていてくれる。そんな彼の懐に飛び込むように駆け込むと彼はお疲れ様と頭を撫でてくれるのだ。 じんわり汗ばむ夏は空を彩る星を眺めながら、木枯らしが髪をさらう秋は鮮やかなイチョウの絨毯を歩きながら観光地にしては比較的心優しいお値段の駐車場へ並んで歩く。 「今日は平和だった?」 「今日はねー」 サービス業界で働く私と医療の世界に身を置く彼。 彼の生きる世界を少しだけ齧った私は、彼をとても尊敬している。口には出さないけれど。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!