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「シュウはどんな休日だった?」
「俺はねー、寝てた」
普段命の現場にいるからだろうか、彼は休日の殆どを寝て過ごす。それかゲームに明け暮れる日々だ。
彼の部屋に保管されてるゲームたちには私を虜にしたものもちらほら。自宅にはない(幼少時代、親にはゲーム機や漫画が禁止されていたので)ものを見ると挑戦してみたくなるもので、やってみると楽しくなりハマってしまうのだ。ハマってしまっても彼の家に行かなければ出来ないので、最近はお家デートが多くなってしまっている。
「どうかした?急に黙って」
「可愛いゲームのこと考えてた」
「すっかりあのゲームの虜だね」
クスクスと目を細めて笑う彼の右の薬指にはシルバーの指輪。いつか本物をプレゼントするからねと私の誕生日にくれたお揃いのリングだ。
かつての恋人たちもリングを送ってくれたが、牽制というより私に似合うと思って買ってくれたらしい。そんな気遣いも私には嬉しかった。
「今日はどこ行くの?」
「何食べたい?」
「んー、シュウは?」
「んー、中華行こうか」
ぎゅっと繋いだ手を自分の方に引き寄せて、私は彼の鎖骨とごっつん。それも額とごっつんこなら可愛い気がするが身長的にあたるのは顎。顎の骨と鎖骨、骨同士なので割と痛い。私は一人顎をさすっていると彼は飛び出してきた自転車を睨みながら私の腰に手をまわしていた。
「あ、またぶつかった?」
「顎打った」
「ごめんね、大丈夫?」
彼は心配そうに私を見ながら私の顎をさする。
信号待ちをしながら彼氏に顎をさすられるこの状況は一体なんなのだ。
「大丈夫だから、ん、」
コンプレックスの小さい手を精一杯広げて彼の手を催促する。その催促に負けて、彼は手を顎から私の手へ。それで良いと頷きながら青に変わった信号、ぞろぞろと動き出す人混みに紛れた。
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