0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
そんな彼との恋愛は意外と長く続き、高校生・専門学生と5年間共に過ごした。
彼が隣にいるのが当たり前で離れるなんて夢にも思わなかったし、彼も同じだと思っていた。付き合いたての頃のようなラブラブ感はもう無かったが、どちらかというと熟年夫婦のような何も言わなくても互いの意思疎通が図れるような…そんな関係だった。
一番幸せだったのはいつだろう?
やはり学生時代だろうか。
記憶を振り返ると懐かしさで溢れる。
彼と初めて出会ったのは保健室だった。
不器用でどんくさくて、怪我の多い私は保健室の常連と化していて、彼は当時ラグビー部に所属していた。仲の良いクラスメイトに誘われて入部したものの、スマートな体型の彼はよく脳震盪を起こしては保健室に運ばれていた。
出会った時も部活中のそれで運ばれ、ベッドに横になっていた。
私はというと部活倉庫に置くための棚を同級生たちと制作中にのこぎりで指を切りだらだらと血を流す指にハンカチをぐるぐる巻きにしていた。
「今度はどうしたの…?!」
保健室の先生の顔色の変わり様に吹き出しそうになったのは後にも先にもこの一回きりだ。
ベッドに横になった彼の寝顔が可愛いなと眺めながら指の治療をしてもらっている最中に私は貧血を起こしてしまい、目が覚めた時には彼の姿はもう無かった。
名前なんて知らなかったし、また縁があれば会えるだろうと思っていたが学年が上がればそんな出来事さえも忘れてしまう私。
付き合ってからそういえばと思いだしたものだ。
最初のコメントを投稿しよう!