人形供養

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 鏡で見るより遥かに大きな姿の私が私を見ている。  訳が判らず戸惑っていると、体を抱え上げられ、私はどこかに押し込められた。  狭くて暗いその場所が怖くて、私は叫び声を上げた。そのつもりだったけれど声が出ない。指一本すら動かない。  そのままどれくらいの時間が経過しただろうか。  ふいに、閉じ込められている場所ごと体が宙に浮く感覚がした。  どこかへ連れて行かれる。でも、いったいどこへ?  動けないし喋れないまま車か何かに揺られ、私は到着先に下ろされた。  何か話声がして、ふいに世界が明るくなった。  頭上から光が差し、やっと狭い場所から外へ出される。  その視界に、いつもよりかなり大きく見える両親と、その傍らにいる私が見えた。  動けないまま三人を見つめると、私がじっとこちらを見つめ返し、ニヤリと笑った。その瞬間、私は、今自分がどうなっているのかを理解した。  私と人形の中身が入れ替わっている!  どうして? 何で? どうやって?  考えても答えの出ない問いが幾つも沸く。その間にも、私の側にはいかにもお坊さんといった姿の人が座り、何やらお経を唱え始めた。  人形供養…お寺に持っていて拝んでもらった後、燃やしてしまうという儀式。  私、燃やされるの? 人形になったまま死んでしまうの?  そんなの嫌! 絶対に嫌! でも、元に戻る方法なんかない。  お経が終わり、境内の隅でに、預けられた人形達をくべるための火が焚かれる。その炎を、泣くこともできない体で私はただじっと見つめた…。 人形供養…完
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