人形供養

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人形供養

 触ってはいけない。確かにそう言われたのに。  少し前におばあちゃんがなくなって、遺品の整理に行った際、箱にしまわれている日本人形を見つけた。  チラリと見えただけでも綺麗な人形で、よく見ようと手を伸ばしかけたら、お母さんに箱ごと取り上げられた。 「これは触っちゃダメなものなの。別の片づけを手伝って」  そう言われて人形を持って行かれてしまったから、私は仕方なく他の片づけを手伝った。でもどうしても人形のことが意識から離れず、こっそり探そうと思った時、お父さんとお母さんが何か話しているのを聞いた。  詳しいことはよく判らないけれど、人形を供養しなければという言葉がたまたま聞こえてきた。  人形って、多分あの人形のことよね? 供養は確か…お寺とかに持って行って、拝んでもらった後、焼いてしまうんじゃなかっただろうか。  あの人形が焼かれてしまう? だったらなおのこと、もう一度だけでいいからきちんと見ておきたい。  欲求を抑えられず、私は両親の目を盗んで人形を探した。  他の片づける荷物の一番奥に、隠すように人形の箱はしまわれていた。  引きずり出して箱の中を見る。間違いなくあの人形だ。  上から見るだけでも綺麗で、どうしてこれを供養なんてしてしまうのか判らない。  もしかしたら、下はひどく傷んでいるのだろうか。  そんな疑問が沸き、私は何気なく人形を持ち上げた。その瞬間、いきなり意識が遠くなった。  気がついた時、私の目の前には私がいた。
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