2人が本棚に入れています
本棚に追加
由衣さんの日記。
なりたくて、なれなくて、届かないと妬んだ彼女は、私と同じ普通の女の子だった。
好きな人のことで悩む。好きな人のため、綺麗になりたいと願う。
ただの恋をする女の子。
白いページには、少し右上がりの青い字で、愛美という文字があった。
今日も、浩二くんが愛美ちゃんの話をした。
幼馴染ってどんな感じなんだろう。いいな。私の知らない浩二くんをたくさん愛美ちゃんは知ってて。
友達たくさんいるみたい。私とは違うな、みんなに好かれていいな。
もしかしたら、浩二くんも、愛美ちゃんを好きなときあったのかな…。
ううん。信じなくちゃ。浩二くんの彼女は私なんだから。
浩二君に似合う人になる。
由衣さんは不安でも、信じること、努力することを選んでいた。
浩二の体の心配をして、お弁当を差し入れたり、浩二の興味のある本を探して紹介したり。押しつけがましくない程度に勉強を教えたり。
浩二のために綺麗になれるよう、スキンケアだけでなく。好きな話で盛り上がれるよう、サッカーの知識もつけたり。自分は嫌いなホラー映画を観たり。
一緒にいる時間を大切にするよう、浩二が大好きだから。
「…悔しいな」
私だって、好きだった。世界で一番好きだと思っていた。
でも、ずっと一緒にいる以外、私は何かをしただろうか。
いつも、もっともっと望んで。願うばかりで、現実的に何かをしてはこなかった。
浩二のことも、いつかその時が来たら、浩二から告白してくれる。
そう夢を見て。
いつだって笑ってくれる浩二に安心していた。このままでも大丈夫だと。
由衣さんのように、自分から、気持ちを伝えなかった。
小さくても、少しずつ、ゆっくりとでも目を逸らさず。
由衣さんは、浩二の心に近付いて行ったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!