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「聞いた? 浩二と由衣先輩、付き合い始めたらしいよ」
ある日、教室に行くとクラスメイトが言った。
「マジかよ! 女なんて興味ないって言ってたくせに。浩二も男だったんだな!」
「由衣先輩と付き合えるとか、どんな幸運だよ!」
由衣先輩は二学年上の三年生で、文芸部の部長をしているとても綺麗な人。
派手さはないが、守ってあげたくなる女の子そのものという感じで、隠れファンも多かった。
「愛美は知ってたんだろ? 幼馴染だもんな」
「あー! マジ羨ましい」
嘆く男子の言葉が耳に入らない。
浩二に彼女? 年上の? 付き合うとか興味ない、て言ってたくせに。何で…。
居ても立っても居られず、私は浩二のクラスに走った。
窓際一番後ろの席。いつにもまして人だかりができている。
「こう……じ」
声をかけようと口を開くが、かすれ声しかでてこない。
もし本当だったら。浩二の口から、付き合ってる。そう聞くのが怖い。
「あ! 愛美じゃん! どうした?」
同じ中学だった男子が入口で立ち尽くす私に気付いて、振り向いた。
「……っ」
その瞬間、はじけたように私は、教室を背に走り出していた。
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