星に祈りを

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 夜、どうしても眠れなくて、ジャージに着替えて、近くの公園に行った。  ブランコと、滑り台だけある、小さな公園。  幼いころ、浩二と毎日遊んだ思い出の場所。 「星…見えないな」  このブランコから願い事をたくさんした。  高く漕ぎあげて、空に近づけば、願いは叶うのだと思っていた。  動物園に行きたい。うさぎのぬいぐるみが欲しい。テストで百点がとりたい。  叶ったものも、叶わなかったものもあったけれど、一番の願いは口に出したことはなかった。 「浩二とずっと一緒にいたい。好きになってもらいたい」  ぽろり、と外に零れた音。  十年かけてはじめて出た言葉は、叶うことなく、暗闇に消えようとしている。 「…どうして、私じゃないの?」  目頭が熱い。泣きたくないのに涙が次から次に溢れてくる。  由衣先輩は、私のなりたい女の子そのものだった。  可愛くて、綺麗で、目が大きくて、色白で、華奢で、細くて、守ってあげたくなる女の子。  もっと、私が可愛かったら、浩二の隣には私がいたはずなのに…。  もっと私が魅力的だったら、そう私がまるで由衣先輩みたいだったら…。  浩二は私を好きになっていたはずだ!  変わりたい。私は本気で思った。  私、由衣先輩になりたい。由衣先輩になって、浩二に好きになってもらいたい!  見えない星に向かって、必死にブランコを漕ぐ。  強く、風を切って、錆びたチェーンが手のひら食い込んで痛い。 「届け! 届け! 私をどうか由衣先輩にして!」  一際強く漕いだとき、その頂点で私は飛んだ。  その瞬間確かに見えた。雲間から光る星を。その星は今まで見たこともないくらい美しく輝いていた。
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