星に祈りを

8/15
前へ
/15ページ
次へ
「何か、今日雰囲気違くない?」  昼休み、図書室で会った私に浩二は言った。 「そうかな? ちょっと寝不足なせいかも…。普段とどう違って見えるの?」  疑問を疑問で返した私に、浩二はうーん、と首を傾げた。 「どこってわけじゃないんだけど。何となく…空気感? ていうの?」  これじゃ、わからないよね。照れたように笑う浩二。  …こんな顔もするんだ。  目の前にいる男の子は、私の知っている浩二じゃない。  愛おし気にこちらを見つめてくる。優しく相槌を打つ。  こんなに優しく話す浩二、はじめて見た。 「由衣さん? どうしたの? またぼーっとしてるよ」  少し寝たら? 音を立てないよう静かに椅子を近づけると、浩二は私の頭をそっと肩に導いた。  そのまま、優しく頭を撫でる。  壊れ物に触れるよう、そっと。羽が生えたみたいに軽く。  私は泣きそうになるのを、必死に我慢した。  浩二からは、由衣さんに対する好意が惜しみなく伝わってくる。  大好き、という気持ちが、言葉なしに、こんなに伝わるものなんて、知らなかった。  私が欲しかったもの。いつかは得られると信じていたもの。    でも、今は私が浩二の好きな人なんだから。  言い聞かせるように、瞼をきつくぎゅっと、した。  優しく髪に何かが落とされるのを、どこか遠くで感じた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加