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「何か、今日雰囲気違くない?」
昼休み、図書室で会った私に浩二は言った。
「そうかな? ちょっと寝不足なせいかも…。普段とどう違って見えるの?」
疑問を疑問で返した私に、浩二はうーん、と首を傾げた。
「どこってわけじゃないんだけど。何となく…空気感? ていうの?」
これじゃ、わからないよね。照れたように笑う浩二。
…こんな顔もするんだ。
目の前にいる男の子は、私の知っている浩二じゃない。
愛おし気にこちらを見つめてくる。優しく相槌を打つ。
こんなに優しく話す浩二、はじめて見た。
「由衣さん? どうしたの? またぼーっとしてるよ」
少し寝たら? 音を立てないよう静かに椅子を近づけると、浩二は私の頭をそっと肩に導いた。
そのまま、優しく頭を撫でる。
壊れ物に触れるよう、そっと。羽が生えたみたいに軽く。
私は泣きそうになるのを、必死に我慢した。
浩二からは、由衣さんに対する好意が惜しみなく伝わってくる。
大好き、という気持ちが、言葉なしに、こんなに伝わるものなんて、知らなかった。
私が欲しかったもの。いつかは得られると信じていたもの。
でも、今は私が浩二の好きな人なんだから。
言い聞かせるように、瞼をきつくぎゅっと、した。
優しく髪に何かが落とされるのを、どこか遠くで感じた。
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