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2階に探しに行っていた実弦と重吾、続けて3階を探していた里望も遅れてこの教室へと集まる。
開いた口が塞がらず、呆然と立ち尽くす重吾。
普段は冷静なのに、今は目に大粒の涙を湛えている実弦。
両の手のひらで口元を覆い、泣き出しそうなのを必死に堪える里望。
全員に朔奈が見えている。朔奈はここに全員が集まると分かっていたのか、5人が揃うと1歩だけこちらに歩み寄り口を開いた。
『ごめんね。みんな』
間違いなく、朔奈の声。
俺の心を高鳴らせた、朔奈の声。
この声が暖房もとっくに切られて冷え切った教室に木霊すると、耐えていた実弦と里望が泣き崩れる。
重吾も拳を強く握りしめ、歯を食いしばってなんとか平生を装っているが、本当はみんなと一緒に泣きたいのだろう。変なところでプライドが高い奴は大変だなと思う。
俺も、気持ちに整理がつかない。頭の中がゴチャゴチャして、次から次に色んなものが溢れてきて。それが行き場を無くして目から雫となってあふれ出た時にはもう、立っていることもさえも出来なかった。
一頻(ひとしき)り泣いて、この半年間に溜め込んだ想いも全て涙と共に吐き出して、涙が枯れてきた頃、他のみんなも比較的落ち着きを取り戻し始めていた。
朔奈は泣きじゃくる友人の姿を前にして申し訳なさそうに、ただそこに立っている。
まだ涙が残る視界は少しぼやけて見えるが、顔を上げると朔奈の優しく微笑む姿が目に映った。その笑みから、俺達が落ち着くのを待ってくれているんだと悟った。
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