156人が本棚に入れています
本棚に追加
さて、探すと言ってもどこから探すべきなのか。俺には何の情報も無い。誰か有益な情報を持ってないかと質問をしてみる事にした。
「目撃情報が多いのは、この教室棟じゃないかしら」
「あぁ、むしろ屋外での噂は聞かないぞ」
立て続けに美香と重吾が答える。
冬休み中の幽霊に対する情報は比較的、生徒会に寄せられているようだ。
長期休暇は部活や特別な用事が無い生徒は来ないため、情報が寄せられているといっても両の手で数えられるほどらしいが……
逆に重吾は野球部で常に外で活動しており、室内スポーツ系の部活動をしている友人から噂を耳にしたらしい。
「私は、学校に来た日はほとんど図書室にいたけど、その周辺では見かけたって人はいなかったよ」
図書室は教室棟とは別の棟、職員棟側にある。里望の情報が後押しとなって、まずは教室棟を隈無く探してみることに決まった。
もし本当に朔奈がどこかにいるなら、早く会いたい。だけど、そもそも幽霊なんて非科学的な存在がいるなんて眉唾だ。
そんな不確かな存在のために俺だけでなく他の4人も動いてくれていることは、それだけ朔奈という人物がみんなから好かれていたという事だろう。
俺は1階の各教室を探していく。誰も居ないガランとした教室を、次から次へと扉を開けては中を目を凝らして見渡す。全ての教室を見て終えたが、やはりというか見つからない。
「朔奈……どこだ? どこかにいるんだろ?」
噂は噂でしかないのかと諦めかけたとき、思わず声に出てしまった。日も暮れ始め、教室がセピアの色に染まった。
『晦人……くん』
誰もいなくなった教室で急に朔奈に名前を呼ばれた気がして振り返る。
教室の入り口に見慣れた姿があった。あの日に窓に映ったその姿は見間違いじゃなかった。
もちろん、朔奈は死んだ。この目でその瞬間を見たからはっきりと覚えている。
目の前にいるのは、本来この世にはいてはいけない存在。恐怖が無いかと言えば、嘘になる。
それでも、ほんの数メートル先には、朔奈の姿があった。あの大きな鉄の怪物によって、その命を絶たれる以前の姿で……
最初のコメントを投稿しよう!