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「こんな……ところにいたんだな、朔奈……こんなに、近くにいたんだな」
俺は朔奈に向かって呟く。ここは俺達の教室だ。本当に近くに朔奈はいた。
それに対して、朔奈は小さく頷くだけ。
「お前、体は何ともないのか?」
幽霊に対して到底的外れな質問を投げかけたのは重吾だった。
『何ともない、というのは変かな? 私はあの時、死んでる。ほんのさっきまで、暗闇の中を彷徨っているような、寂しくて悲しかった。そんな感覚だけ……だけど。今は何ともない。意識もはっきりして、私は今ここにいるんだなって実感してる』
何だかフワフワした答えだけど、死んだ事なんて無いし、まして幽霊になった体験ももちろん無いから、それ以上は誰も質問しなかった。
むしろ、そんな直感任せのフワフワした感じがまさに朔奈らしいと思えて、とても懐かしい。
『私を探してくれてありがとう。多分、みんなが私を探してくれたから、私は今こうしてみんなと話しが出来るようになったんだなって思うよ。とても暗い、体の自由もない、むしろ体があったかも分からない。そんな場所で意識もはっきりとしない……本当に怖かった。でもみんなの声が聞こえた。聞こえたと感じた時には、私はこの教室にいたの』
なんか、お礼を言われても朔奈が話している内容が全く分けが分からなさすぎて、歯痒いだけ。
冥界のハデスが、朔奈を現世に返してくれたのかな? 理由なんて考えようにも思いつくはずがないので、とりあえずはそこに落ち着けることにした。
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