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冬の日暮れは早すぎて、もうとっくに沈んでいる。朔奈を見つけた時には、まさに沈む瞬間。だとしたら、今は何時だろう。時計を見るのも怖い。
時計を見ると急に現実に帰ることになりそうで……せっかく会えた朔奈と、もう別れないといけないような気がして……
そう考えていると朔奈の方がもう遅いからと、みんなに帰宅するように促してくる。明日の朝、また皆の前に現れると約束を付け足して……
ふと、朔奈は誰にでも見えるのかと疑問が浮かんだ。もし約束通り明日の朝に会えたとしても、クラス中に朔奈の姿が見えたら大問題だ。
朔奈もそればかりは分からないと答えたが、すぐにそれは杞憂で終わる。
「まだ、生徒が残っていたのか。もう遅いから、5人ともすぐに家に帰りなさい。もう少ししたら校門も閉めるからね」
見回りの用務員さんが教室に灯ったままの明かりを見て様子を見に来たようだ。しかし“5人”とは、用務員さんには朔奈は見えていないらしい。
俺達5人にしか朔奈は見えないのか? そんな事を考えたが、冬休みに幽霊の目撃情報が沢山あったのだから、決めつけるには早い。
念のため人があまり来ない場所をと思い、今日集合した人気の少ない西階段を明日の朝の集合場所として選んだ。朔奈にまた明日と約束し、俺達は帰路につく。
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