さよならも言えなくて

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2016年5月23日(月)  春の陽気な風が頬を撫でる。  ようやく、北海道札幌でも春の芽吹きを感じることが出来る暖かさになってきた。  あたりの家々からは風に運ばれて甘い香りが漂ってくる。ライラックの香りだ。  この香りを嗅ぐと、つい先日まで雪に覆われ、とても寒かった事が嘘のように感じられる。北海道ならではの春の香りだ。  今年で3回目の北海道の春。  元々住んでいた兵庫県と比べると1ヶ月ほど遅い春の訪れな気がする。しかし、ライラックの花の香りに包まれると、北の大地の春の訪れも良いものだなと思うようになってきていた。とても心が落ち着く。  調べたところによると、ライラックの香りにはリラックス効果や新陳代謝を高める働きがあるそうだ。  兵庫に住んでいた頃はライラックなんて植物は聞いたことも無かったが、北海道。特にここ、札幌では市の花としてほとんどの民家の庭先に植えられている。  樹木の高さは基本的には2メートルちょっと。大きくても4メートルほど。  鮮やかな薄紫や白、桃色の花が丁度目線の高さ程に咲いていて、眼前に迫るライラックの花々はとても綺麗だ。
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