夏を閉じ込めた窓

2/3
前へ
/3ページ
次へ
夏期講習のためだけに来る、むし暑い夏休みの学校。 部活に打ち込める唯一の期間、 カンカン照りの茹だる敷地内にて、 屋外競技部は声を出し合い練習に励んでいる。 野球部はもはや、なんと言っているかわからない掛け声を出して、グラウンド中を走り込む。 サッカー部は青々とした芝生の上、休憩中なのか木陰でボトルを片手に汗を拭う。 テニス部はひらりとしたスカートを纏い、身を低くしてボールを待つ。 卓球部が体育館の扉を開け放って、かわいい模様のタオルを頭に被せ、言葉にならない声を出す。 バスケ部はキュッキュと小煩い音を立て、あせだくになって身体をぶつけ合う。 剣道部はほかのどの部活よりも、蒸し暑さと闘っているのだろう。 いくつかの文化部は、暑い暑い言いながら持ち込んだ扇風機に当たり、冷えたジュースでも飲んでいるに違いない。 なんせ部活と勉強に力を入れているこの学校。 夏休み中でも全生徒が登校している。 部活のある生徒は部活を、 帰宅部のヤツらは勉強を。 余計な方針のおかげで今、俺は汗だくになって問題を解いているわけだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加