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「へぇ、その若さで永遠を望むなんて。よっぽど暗いか、真面目なのか、皮肉屋なのか」
「どうとでも仰ってください」
「あぁ、わがままか。子供特有の」
――子供。その言葉に、小夜子の胸がざわめく。
「あなたに、なにがわかりますの」
「わからないよぉ、聞いてないからさ」
彼女の瞳を睨み返しながら、その真円の深さに吸い込まれそうになる。
黄色く深い、まるで空に浮かぶ月光のような眼。
「誰かに話せば、続くかもよ。変わることで、ね」
――少女は、本当に、正常でないのか。
その瞳の言いしれぬ魔力に、小夜子は、自身の考えが揺らぐのを感じる。
「……終わりがあるとは、悲しいことです」
「そうかしら」
「当たり前です。幸せであるなら、ずっと、ずっと、同じ時が続いてほしいと願うものです」
小夜子は、痛む胸を抑えながら、膿をこぼす。
「ずっと、この時で、終わってしまえばいいのに」
その思い詰めた瞳は、まっすぐに水面へと堕ちる。星のきらめきを映し出す、水鏡へと。
「あの星達のように。永遠に、なれればいいのに」
次いで、下方の水面から、上方の天へ、視線を移す小夜子。
(あの方と、初めて共に見た、あの日のよう)
「あなた、今が幸せなのね」
のんきとも言える少女の言葉に、小夜子は気を悪くする。
「……今は、最悪です」
「あはは、そうなんだ」
「笑うところですか?」
やはり変わった少女だ、そう小夜子は感じた。
(まるで、人ではないみたい)
白磁の肌に、細かく装飾されたドレス。かつて都会で見かけた、異国の人形のような見た目。
(魔の女性とは、言い得て妙です)
美しいが、同じ人とは想えない距離も感じる。
しかし、なぜだろう。小夜子の心に、不安や違和感は感じない。
……もしや、月と星の輝きに、惑わされているのだろうか。
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