永遠の星

6/15
前へ
/15ページ
次へ
 その、白すぎる彼女の腕が、小夜子の喉元に触れた瞬間。 「……っ!」  全身がふるえ、血の気が引き、小夜子は身動きがとれなくなった。  なのに首回りの熱だけが、彼女のひやりとした手と対比するように、ひどく熱くなった。 「あなたの喉元は、これから、違う世界を呑み込むのよ」 「っ……」  首筋に突き立てられる、五本の痛み。それは、針の痛みにも、包丁の切り傷とも、似て非なるもので。 (く、る、し……) 「永遠への始まり、知ってるかしら」  少女は、まるで三日月のように、紅い口元を歪めた。 「――この世界への別れ。死から始まる、再生よ?」 「……っ!」  その時、小夜子の胸に、感情がほとばしった。  ――永遠を望んだ理由。変わってほしくない、あの方との時間。 (違う、違うの……!)  少女の誘いの意味を、瞬間的に小夜子は察知した。その道を踏み出せば、胸に秘めた想いは、本当に"永遠に"とらわれてしまうものなのだと。  だからこそ小夜子は、痺れる全身をふるわせ、叫んだ。 「いやっ!」  ――その想いが、異なる想いに、塗り潰されてしまいそうだったから。 「あっ……」  荒く息をつき、かすれる声を漏らしながら、ようやく、視界が冷静になった頃。 「いい反応だったわ」  橋の上に突き飛ばされ、座り込む少女の姿が、とらえられた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加