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 一向に右腕はその目的を果たせない。仰向けに横になっている僕の右半身側に間違いなくそれはあるはずなのに。枕の下を撫でる。指先に硬いものが触れることもない。何度も何度も僕はシーツを撫でた。なぜだか少し気持ちがよくなった。しかしその感覚と同時に目当ての品が一向に出てこないことへの苛立ちも生じていた。  脳も痺れを切らしたようだ。ついに上半身にも命令をくだしたようだ。右腕は探す行為を中断し、起き上がるための上半身を支える役目を果たす。左手は壁を這う。慣れた手つきで目的の物を探す。目当ての突起物を見つけ、それを押す。部屋の天井の中央から放たれた光は全方位を一瞬にして照らし出す。しかし照らされたのは壁と床、さっきまで自分を包んでいたはずの布団、そして横になったままの僕だけだった。  
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