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「もう、いいや」
「えっ?なんで?」
「描く気失せた」
「なんで?」
「もう描かないの?」
「うん。もういい。描きたくない」
「あたしのせいかよ?
描きたくなくなったか?
可愛く話せてなかったか?」
「うん」
あたしには分からない信念めいたものがあるみたいで、夜一はパタンとスケッチブックを閉じた。
もしかして、イメージを崩壊させたのか。
「ごめん。ちゃんとするから、描いてよ」
「ねえ、なんでそんなに俺の絵にこだわるの?」
「夜一の絵が好きだったから」
「嘘」
「嘘じゃな……いもん。
だから、描いてほしい」
「俺、知ってるよ。
なんで、濱田さんがそう言うのか」
やっぱりと思ってるのに、あたしはまたドキッとして、痛みを感じた。
「そんなことよりさ……」
呟きながら夜一は、あたしに向きなおった。
「キスの練習でもする?」
「えっ?」
絵を描いてるときとはまた違う顔で、あたしを見つめる。
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