第8章 初めてのクリスマス(つづき)

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「でも、5分でも10分でも、イブを一緒に過ごせるでしょ?  だって、去年は出来なかったから」 そんな彼がいじらしく、同時に、ちょっぴり心が痛む。 だが、 「うん。なるべく早く帰って来るね」 これが、私の言える精一杯。 そしてやっぱりこの年は、イブを二日後にした日から 突然、売れ行きが伸び始めた。 お蔭で、欠品を起こさせないために、私たちは大わらわ。 契約運送会社のみでなく、一般の宅配業者も数社利用して とにかく全店の在庫を補充していく。 そうして迎えた、イブ当日。 結局、仕事を終えられたのは、夜の九時半を回った頃。 「終了」の声がオフィスのどこからともなく掛かり、 部屋は、安堵と疲労の空気に包まれた。
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