第8章 初めてのクリスマス(つづき)

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「冠くん」 私は、ほんの数歩小走りに彼の胸に飛び込んだ。 そして、そっと抱きしめてくれる彼をキュッと抱きしめ返して、呟く。 「大好き」 広い胸に抱かれ、彼の温もりと彼の匂いに包まれて、 この数日の疲労がフッと全身から抜けていく。 その代わりに、心の中がじんわりと幸福感に満たされる。 そして、その私の頭上から「ナッちゃん」と優しく声を掛けられた。 「ん?」 少しだけ腕を緩め見上げると、微笑む彼の眼差しに迎えらえる。 そして、静かな彼の声がゆっくり言った。 「一年前の先週、僕、すごくドキドキしてナッちゃんを待ってた。 でも、現れたナッちゃんが、あんまりにも綺麗で そんなものは、一瞬で吹き飛んじゃった」 そう。 一年前のクリスマスを前にした週末、彼は私にプロポーズしてくれた。
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