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「冠くん」
私は、ほんの数歩小走りに彼の胸に飛び込んだ。
そして、そっと抱きしめてくれる彼をキュッと抱きしめ返して、呟く。
「大好き」
広い胸に抱かれ、彼の温もりと彼の匂いに包まれて、
この数日の疲労がフッと全身から抜けていく。
その代わりに、心の中がじんわりと幸福感に満たされる。
そして、その私の頭上から「ナッちゃん」と優しく声を掛けられた。
「ん?」
少しだけ腕を緩め見上げると、微笑む彼の眼差しに迎えらえる。
そして、静かな彼の声がゆっくり言った。
「一年前の先週、僕、すごくドキドキしてナッちゃんを待ってた。
でも、現れたナッちゃんが、あんまりにも綺麗で
そんなものは、一瞬で吹き飛んじゃった」
そう。
一年前のクリスマスを前にした週末、彼は私にプロポーズしてくれた。
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