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「ナッちゃん、ありがとう」
僕は、彼女のスベスベの頬に小さくキスをした。
すると、ちょっと僕を振り返った彼女が、細く笑ってキョトンとする。
「どうしてお礼? 私も楽しかったし、嬉しいよ?」
「でも……」
確かに、彼女も楽しんだのかもしれない。
だがこれは、普通の幼少期を過ごさなかった僕を喜ばせるために
彼女がしてくれたことなのは明らか。
実際、結婚してからというもの、
彼女は、いつも何かと僕の中で空白になっている経験をさせてくれ、
喜ばせてくれる。
だから、柔らかく温かい彼女を抱きしめ、その肩に顎を乗せて素直に聞いた。
「どうしてナッちゃんは、僕が喜ぶことが分かるの?」
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