第8章 初めてのクリスマス(つづき)

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「それはね、冠くんよりも少しだけ長く生きてて、 少しだけ多くの経験をしてるから」 そして、「それとね」と続けた彼女のこめかみが、 僕の頭に、そっと寄せられる。 「冠くんが、すごーく好きだから」 「でも僕だって、ナッちゃんがものすごく好きなのに。 僕は、ナッちゃんがしてくれるみたいな事ができない……」 冠くん。 彼女の細い手が、彼女の肩に顔を埋めた僕の頭を優しく撫でた。 「冠くんは、私がして欲しいことも、私を喜ばせることも、 いつもしてくれてるよ?」 だが僕には、そんな事ができた憶えがない。 しかし、それを言葉に出来ないままでいる僕の頭を やっぱり柔らかく撫でながら彼女が言う。 「世の中の女性が、パートナーの男性に対して不満に思う事 ナンバーワンって、何か知ってる?」 僕は、彼女の掌の下で緩くかぶりを振った。
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