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「それはね、冠くんよりも少しだけ長く生きてて、
少しだけ多くの経験をしてるから」
そして、「それとね」と続けた彼女のこめかみが、
僕の頭に、そっと寄せられる。
「冠くんが、すごーく好きだから」
「でも僕だって、ナッちゃんがものすごく好きなのに。
僕は、ナッちゃんがしてくれるみたいな事ができない……」
冠くん。
彼女の細い手が、彼女の肩に顔を埋めた僕の頭を優しく撫でた。
「冠くんは、私がして欲しいことも、私を喜ばせることも、
いつもしてくれてるよ?」
だが僕には、そんな事ができた憶えがない。
しかし、それを言葉に出来ないままでいる僕の頭を
やっぱり柔らかく撫でながら彼女が言う。
「世の中の女性が、パートナーの男性に対して不満に思う事
ナンバーワンって、何か知ってる?」
僕は、彼女の掌の下で緩くかぶりを振った。
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