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第二部:秋冬の定まり。 歩みは変わらず・・2
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今年の秋は、木葉刑事の所属する班に運命的な事件が次々と転がり込む。 青年が過去の加害者を自殺に追い詰めた事件は、ある意味でほんの手始めと云えた。 そして、これから起こる或る事件は、篠田班の面々にも一生、その記憶に残る事件となる。
だが、この9月も終わりに近付いた日、篠田班の全員が出勤し。 朝のニュースで流れたスキャンダルをネタに、市村刑事と里谷刑事に如月刑事を加えて話し込む。
一方、木葉刑事と飯田刑事は、二人で席を並べていて。
「なぁ、木葉」
「なんですか、飯田さん」
「実は、娘が剣道よりも球技に興味を持ち始めたよ」
「サッカーですか?」
月並みな想像から聞き返すと。
「それが、ゴルフなんだよ」
何故か、飯田刑事は一人で困ってしまう。
「あら、飯田さんは、ゴルフが嫌いですか?」
「ん~、いや・・ほら、女性のゴルファーは、みんな今はスタイリッシュと云うか、格好が派手だろう?」
「あ~」
「あんな姿で、みんな着飾ってる。 なんだか俺には、どうもスポーツに見えなくてなぁ」
「ま、今の女性ゴルファーは、みんな綺麗でモデルさんみたいです。 女の子からすると、見て解り易い憧れなんでは?」
「ん~~~」
ゴルフに対しての感覚が、どうも武道とは違うと言いたげな飯田刑事。
そんな彼の基本は、娘さんと云う身近な存在を中心にしているの感じてか、チョット困った笑みを浮かべた木葉刑事。
そんな班の面々を見ていた篠田班長は、今日が暇な一日となると思う。
(あの若者の一件で、また変わった事件を解決しちまったなぁ。 ウチの班のデキに、新設された係に所属する班には、活躍の場を求めて直談判をする者が居るとか・・。 おそらく、半月は殺人事件も回されないだろうな)
木葉刑事と、それを抱える篠田班には、事件を解決するたびに羨望と不満が集まる。 刑事達には、それなりの自尊心があるからだ。 班を預かる班長や係長は、自分たちの方が優秀で在りたいと願う。 だが、悪い噂が付き纏う木葉刑事が事件を解決に導けば、手柄が誰であろうと信じたくないと云う感覚が働く。 その不満が、彼らを躍起にさせる。 一課に長く居る刑事ほど、その感情も薄まる傾向にあるが。 中には根強く持ち続け、悪い噂を流す温床になっていた。 ま、遠矢や岩元の一件を受けて、そんな事をする者が大きく減ったのは事実だろうが。
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