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赤子を抱いてその様子を見る郷田管理官は、自身が全てを語らず命令せずとも動くこの班の様子は、只の置き去り事件だけに限定してない処が有り難い。
「一応、私がこの事件も受け持つから、報告は怠らない様に」
こう指揮官らしく云うのだが、元気に泣く赤子に目をやると母親のような笑みを浮かべ。
「はいはい、貴女は良く泣くわね~」
あやしにかかる。
理解したと返事をした一行。 篠田班長は、真っ先にと地下鉄会社へ電話を入れる。
映像ディスクを受け取りに行くのは、木葉刑事と里谷刑事。 他の刑事達は、庶務課からの配分も三人しか居ないとの事で、本部設置の準備や映像を見る機器の準備に動く。
さて、不機嫌なのか・・と思うほどに黙った木葉刑事。 警視庁を出た処で、地下鉄の入り口が在る交差点に向かう中。
「ちょっと、木葉さん」
里谷刑事が、黙って居る木葉刑事に声を掛ける。
「はい?」
‘考え事をしてました’、そんな様子で応える木葉刑事。
「全ての事件に、そんなマジな形で入るの? そのうち疲れて死んじゃうわよ」
だが、木葉刑事の顔は、まだ何処か真面目なもので。
「さて・・、ね」
間を空けて流し目に虚空を見るその濁らせ方には、里谷刑事の方が気味悪い。 木葉刑事の秘密を知るだけに、嫌な予感がして。
「ちょっと・・、まさか、まさか?」
立ち止まる里谷刑事に、木葉刑事は人通りも在るので。
「何も言わないので、母親かは解りませんよ。 首に絞められた痕が在る、年配者女性・・それだけですから」
“女性の幽霊が視えていた”
里谷刑事には、それだけで気合いを入れるには十分過ぎる。
「・・行こう。 ソッコーで母親を捜し、見付けて遣るわ」
木葉刑事の視えるモノは、時として最悪の事すら在る。 急ぐ二人は、駅の事務へと、映像データを受け取りに行った。 また、受け取ると同時に、相談窓口や事務所で聞き込みをするが。 昨夜と駅員は入れ替わって居るし、怪しい者を見た様な話はないと云う。
さて、警視庁に戻った二人と篠田班の面々は、会議室にて多数のデータを手分けして観る。 それからは、監視カメラの映像にて、コインロッカーの様子をチェックする一同。 前日の朝から今日の午前10時頃までの映像を、分割されたディスクを一人一人に分けて、確かめた。
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