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すると、確かに前日の防犯カメラの映像には、赤子の入ったと思われる菓子箱をロッカーに入れる不審な女性が居る。 その時刻は、昨夜の午後10時半過ぎ。
その記録された映像の時刻を見た飯田刑事は、
「まさか、・・正気か? あの赤子は、12時間近くもロッカーに居たのか?」
こう驚いた。 父親でもある彼は、娘と同じ女子の赤子が長時間の間ずっとロッカーの中と知って驚いたのだ。
ここで里谷刑事は、先ほどに軽く聞き込んだ或る情報を思い出し。
「そう云えば・・。 桜田門駅の構内は、夜中に一部が改装の為に工事中と成るみたい。 そいで、コインロッカーの中のものが紛失したら不味いから、ロッカーの入り口をシャッターで閉じてたみたいよ」
織田刑事は、母親の視点から。
「あの赤ちゃんは多分、夜中に起きて泣いたりしたのよ。 でも、工事の音やら朝の雑踏で分からないし、泣き疲れて寝ちゃったかもね」
この意見が出る最中でも、木葉刑事の眼はその置き去る女性に向かっていて。
「この人は・・赤ちゃんの母親ですかね」
其処に映るのは、見るからにホステス風の中年女性で。 サングラスにスカーフを頭に巻いた姿は、印象に残る様子で在る。
女性の様子を窺う篠田班長は、
「母親じゃないか」
と。
市村刑事も。
「映像の様子は、母親らしいぞ」
不審なその女性は、コインロッカーに赤ちゃんを預け入れる際、何処と無く託す様に紙袋を触ったり、祈り謝る仕草をするので、赤ちゃんを何かに委ね託して居ると云う雰囲気は伝わる。
然し、問題はその後に起こった。 遺棄した人物が解ったと、その後の行動を観て居たのだが。 或る映像の切れ間から、その人物の姿が消えたのだ。
「あら・・居ない」
画像を見ながら操作する八橋刑事は、何度も巻き戻して観るのだが。
「消えた」
と…。
「そんな馬鹿な」
市村刑事は、横からモニターに近付くも、確かに消えた。
「ん、本当だ」
飯田刑事は、各場所場所の映像データが入ったディスクがまだ他にも在るので。
「その時間に絞って、手分けしよう。 赤子が委棄されたのは、夜の10時38分だ。 その後、あの格好をした女性が何処に行ったのか、映像データを全て見れば解るかも知れない」
時計を見た木葉刑事は、まだ午後の4時半と知り。
「そうですね」
と、ディスクの一枚を取った。
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