4人が本棚に入れています
本棚に追加
その作業員達の中でレスラーの様なガッシリとした体格の50代と思しき人物が、木葉刑事を見付けるなり。
「すいません。 作業現場は危険なんで、今は此方へ立ち入らない様に」
と、言って来た。
彼等に頭を下げた木葉刑事は、ライセンスを取り出しながら。
「あの・・私、警視庁の刑事なんですが…」
その話に作業員達は、一斉に木葉刑事の全身を見た。 ひょろひょろとした印象の彼が、犯人と渡り合う刑事とは思え無かったのだろう。
だが、中に踏み込んだ木葉刑事は、中年の盛りも過ぎ始めたガッシリとした体格の作業員と対面に立ち。
「実は、今日の午前中なんですがね。 この駅のコインロッカーに、乳幼児が遺棄されていまして」
聞き込みの前置きに入った。
然し、まだ駅員から聴いて無かったのか、作業員達は驚いた。
その様子も含めて観察する木葉刑事は、話を進める事に。
「監視カメラの映像に、ちょっと不審な人物が映っていたんですが。 その人物、赤子を棄てるまでは変装をしていて。 遺棄後にトイレ以外の何処か、人の眼の死角となる場所で変装を解いた様なんです。 その場所、もしかすると…」
説明を終えようとする時だ。 体格の良い中年男性の作業員が、奥の場所に座る若い作業員達に。
「おい、さっきの紙袋はどうした?」
と、言うと。
「こっちに在ります」
体格の良い中年の作業員は、木葉刑事に向き直り。
「実は、この作業場にさっき入って来た時に、女ものの服の入った紙袋を見付けてさ。 後で駅員さんに工場開始を知らせる時に、遺失物として渡そうかと…」
若い二人の作業員のウチ、金髪の作業員が黒い紙袋を持って来る。
常にビニールの手袋を持ち歩く木葉刑事は、手袋をしてその紙袋を受け取り。 中身を見ては、変装の道具と確かめて。
「すみません。 この紙袋に触った方は?」
三人が手を上げると、頷いた木葉刑事は。
「おそらく、これが我々の探していたものです。 それで、お手数に成りますが。 手を挙げたお三方、指紋の採取にご協力下さい」
‘指紋の採取’と言われた中年男性の作業員は、他の作業員達を守る様に立ち。
「おい、俺達は関係ないだろう?」
と、不満を見せる。
最初のコメントを投稿しよう!