第二部:秋冬の定まり。 歩みは変わらず・・2

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だが、金髪の若い作業員が。 「チーフ、違いますよ。 除外・・なんたらって奴です」 と。 今時は、警察ドラマでもやっている事だ。 木葉刑事は、レスラーの様な作業員男性へ。 「必要な指紋と、不必要な指紋の区別をする為に、皆さんの指紋を排除する必要が有るんですよ。 今、此方に鑑識さんを呼ぶんで、11時前には終わると思います」 と、スマートホンを取り出す。 連絡を入れた木葉刑事は、進藤鑑識員と話を着けると。 「え~と、それから・・・。 昨夜、此処で着替えた人物は、夜の10時50分ぐらいに来たらしいんですよ。 今日はみなさん、9時台からいらっしゃいますが。 現場に入る時間は、毎日マチマチなんですか?」 腕組みする作業員達は、困った様に頷いたりして。 金髪の若者の作業員が。 「この桜田門駅は、会社員や役所とか役人が多いから、作業着の俺達がウロウロするのを嫌がる人も居るンすよ」 また、眼鏡をした作業員も。 「昨日は、外側の作業を優先して、中の作業が朝の7時過ぎまで押しました」 「あ~らら、現場では不測の事態は付き物みたいなものですからね」 木葉刑事の返しに、体格の良い中年の作業員は、計画の過程が遅れて居るらしく。 「こっちも、やっつけ仕事なんかしたか無い。 だから、なるべく計画通りに、迷惑を掛けず遣りたいンだがよ。 中々、ど~もな。 刑事さん達だって、こんな夜まで働きたく無いだろう?」 「えぇ。 でも、人の記憶や情報は、時には生物の様に賞味期限みたいな処が有りましてね。 時間が経てば薄らぎ、曖昧に成って行きます。 最初の情報集めは、その記憶が新しい時ほどに集め易いって訳ですよ」 「な~る。 それぞれの仕事に、それぞれ鉄則が在るって事か」 「はい」 不愉快にさせない為、どうでもいい事を話のネタにするのは、木葉刑事の変わった処。 然し、指紋採取にやって来たのは、進藤鑑識員と。 今の警視庁の鑑識員の中では一番のアイドル的印象を与える、美少女の様な容姿の〔智親〕《ともちか》鑑識員と。 美人No.1と言われる、あの鴫鑑識員。 警視庁でトップの二大美人鑑識員の来訪に、作業員達の不安を含む不穏な空気は、一気に消えた。 「あら、御二人ペアとは」 珍しい取り合わせと見た木葉刑事に対し、智親鑑識員が。 「急遽の応援でぇ~す」 「ナルホド」 誰かの代わりと、そう理解した木葉刑事。
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