4人が本棚に入れています
本棚に追加
その辺りを知る篠田班長だから、余暇を満喫すべくスマホの漫画サイトを立ち上げる。 もう、警部への昇進は諦めてしまったので、事件が回されるまではノンビリ仕事でも手に余るほどの時間があった。
さて、今年は秋の進みが早い。 本日は、最高気温が23度。 9月の終わりでこれだけ涼しいのは、何年ぶりか。 異常気象が続いた今年の冬は、更に昭和初期に戻ったかの様な気温になると、天気コーナーを担当する気象予報士が言っていた。 母親となる織田刑事は、早めに来た衣替えに大変とボヤき。 八橋刑事は、真冬でも薄着で構わないと体格に似あった話を。
だが、この日は里谷刑事と警護課の捜査員には、非常に嫌な日だった。 送検されたあの岩元は、非常にあっさりと起訴された。 そして、不思議なまでにすんなりと保釈が決まった。 TVで流れる保釈時の様子は、里谷刑事も忘れられないもの。 あの岩元が死刑にされる様な神妙さを持って、喋る間も許され無い様な粛々とした空気を纏って車へ乗ったのだ。
そんな映像を見てからは、里谷刑事が物憂げ気味になり。 八橋刑事や市村刑事は、警部補の試験勉強に向かう。 事件の証拠の返却などの作業に向かった木葉刑事や飯田刑事は、如月刑事と以前の事件に折触れて行き帰りに喋るのみ。
そんな中、この日の夕方を目前にして、また篠田班へと事件が回された。 事件の現場は、大田区の住宅街。 住宅密集地の中に作られた三角の公園内にて、男性の遺体が見つかった。 砂場に埋められたため、子供が砂場を掘り返すまで解らなかったのだ。
夕方が早まる午後4時前。 現場に着いた木葉刑事達は、現場で初動捜査を指揮する望月主任に合流した。 厳めしくオッかない顔の望月主任だが、篠田班が回されたことを知るや。
「いいか、死んだのは近くの住宅に住む会社員で・・」
挨拶もなしに、いきなり事件発覚の経緯と捜査状況を語る。 人の通りが多いこの一帯で、ノンビリした捜査は禁物だ。 理解が早くフットワークの良い篠田班だから、余計な手順をすっ飛ばした。
そして、それから捜査に数日が費やされ、10月に入って直ぐの或る日。 雲の多い朝から木葉刑事は、沈痛な想いに駆られる。 大田区の住宅地に在る一戸建ての二階の窓から、小学1年生の男児が警察へと連れて行かれる母親を見送る。 切れ長い目が特徴だが、わんぱくと云うよりは賢そうな男児だった。
最初のコメントを投稿しよう!