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飯田刑事と里谷刑事が、男児の母親なる女性を連れて車に乗せて行く。 短めの髪型が似合う30代とおぼしき女性は、ガックリ項垂れて覆面車両に乗り込んだ。 立証の警官と共に残る木葉刑事は、家の入り口にて待つ。 実は、児童を預かる手はずの職員が到着する時刻に来ないからだ。
(憎しみは、なかなか消えないな…)
今回の事件は、ふとした事から起こった。 或る会社員が、飲み歩く度に店の女性に手を出し。 遂に、水商売の女性との間に子供を作った。 然し、その会社員は既に妻子が在り。 離婚をするのしないのと、毎日が喧嘩だったらしい。
そして、事件の当夜。 酔っ払った会社員はタクシーを拾ったが。 家まで向かわずして、途中で降りた。 そして、公園で水を飲んだ会社員は、泥酔の中でスマホを使って妻を呼んだ。
もう、夫への愛情など微塵も無い妻だったが。 問題は、出来た子供の事。 宿したホステスは、
“絶対に産むから。 それから、養育費もちゃ~んと払って貰うわ。 だってあの人は、自分は‘独り者’って言ったんだも~ん”
と、不倫と云う認識が無かった事を示したし。 相手の弁護士からも連絡が来て、双方顔を合わせての話し合いを打診されていた。
この女性にだらしない男性は、仕事には定評の在る人物で。 年俸も、一般の会社員より遙に高い。
だが、泥酔した夫を見た妻は、もう愛想が尽きたと殺意を持った。 そして、水を使って衣服を濡らすと、夫を窒息死させた。 砂の入れ替えが行われていた砂場にて、入れ替えに掘られた穴を更に広げて、夫を埋めた妻。 念の為に金品を奪って、わざと物取りの様に見せ掛けた。
だが、その際に車のキーを落として、膝でキーホルダーを微かに砕いたのだ。
事件の捜査に入った木葉刑事は、その焼き物の欠片一つで母親を落とした。 実は、今日はガサ入れの日。 現場で回収されたキーホルダーの欠片を母親のものと理解したのは、木葉刑事を除いて誰も居ない。
“子供に、ガサ入れなど見せたくない”
その想いから木葉刑事は、彼女に自白を頼んだ。 然し、彼女とて、よもやキーホルダーの欠片が回収されていたなど、想像もしていない。
“証拠在るって言うならばっ、此処に出しなさいよっ!!!!!”
子供を守り、自分を守ろうと腹を括った母親は、鬼に成ろうとして居た。 だが、キーホルダーの欠片を見せた瞬間に、母親は愕然とした。
そして・・、罪を認めた。
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