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その短い事件が終わって、木葉刑事は男児の好きな地球儀を贈った。 次世代型の一品で、世界の国の首都が音声と映像で解り。 暗くした部屋の天井に、なんとプラネタリウムが出せる。 地図が好きだと言った男児に、何も出来ない木葉刑事の気持ちを込めた物。 篠田班の全員のカンパも在り、八橋刑事などはその心遣いに感動していた。
篠田班を選んで来た四人の刑事と、木葉刑事を知り居続ける二人の刑事。 更に、木葉刑事を買う篠田班長の視点は、こんな彼の行動を知るからだろうか。 他の班の刑事から、奇妙な誘いを受けることも在るのだが、篠田班に文句を言うことも無く結束している。 また、木葉刑事と皆の居る篠田班に対する一部の刑事部首脳陣が持つ信頼は、一課最高の班に近付いていた。
そんな今、その事実が周りにも見えるぐらいに窺えた、特殊な事件がやって来た。
10月中旬。 或る日、篠田班長が、一課長から貰った菓子折りを班の皆の元へと持ち帰った昼間。
「お~い、一課長からの差し入れだ。 高級和菓子の詰め合わせだそうだ」
冷やし中華を啜っていた里谷刑事は、甘いものが来たと指を鳴らし。
「さ~すがは木田一課長サマ。 私の好みを解っていらっしゃるぅ」
と、お茶を煎れに立ち上がる。
全員が揃う部屋にて、里谷刑事以外の全員が思う事は…。
“お前は、一課長の愛人か”
と、これのみ。
実は、木田一課長の奥さんとは、京都の老舗和菓子屋の娘で。 年に数度、東京支店から差し入れが来る事が在る。
だが、栗きんとんの和菓子を食べる里谷刑事は、つい先日に起こった事を思い返して。
「然し、一年ってサ。 年齢を重ねるほどに、経つのが早いわね」
織田刑事は、羊羹タイプの抹茶和菓子を貰いながら。
「そんな発言をしてると、私みたいに直ぐオバサンに成るわよ」
と、からかうも。
お茶を飲む里谷刑事は、何処か惚けるような表情を含ませながら。
「だって、5月にあの岩元を見て、これ以上ないってぐらいに怒ったのよ。 なのに、ついこの間に死んだなんて・・。 なんだか、時が早送りされたみたいよ」
里谷刑事の意見に、一同が自然と黙る。 岩元が保釈されたのは、妻が夫を殺害したあの事件が発覚した日で。 つい先日まで行方不明となっていた岩元が、自殺する旨の手紙を残し自分の頭を拳銃で撃ち抜いた。 一般の通行人が見ていた目の前の事で、今はそのニュースで持ち切りだ。
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