第二部:秋冬の定まり。 歩みは変わらず・・2

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然し、その後に収容された岩元の遺体を診た監察医は、 「言い換えるならば、これも一つの殺人ではないか・・」 と、こう呟いたそうだ。 岩元の自殺に驚いた里谷刑事だが、木葉刑事を経由して聞いた監察医の話には、茫然自失に近い感覚に至った。 何と、自殺して死体となった岩元だが。 その全身は、酷いリンチを受けた・・と在り在りに分かる様子が窺えるもので。 片足の骨、左腕の骨など、自殺に必要の無い骨が彼方此方で折れるほど。 検死では、 “複数人により、長時間に渡って暴行されたのではないか” と、診断結果が出された。 そして、今。 検察と警察庁には、連日の様に多くの記者が集まって居る。 岩元が主導したとされる事件で死んだ捜査官のことや、今回の保釈が正しい経緯で行われたのか・・。 様々な事情を覗うため、記者もあの手この手で情報や証言を得ようとしているらしい。 然し、岩元の自殺事件は何故か、所轄扱いにて自殺と決まって、事件性を調べる為の捜査本部の立ち上げには至らない。 警察がどうしようと、結果は見え見えで在る。 一方、今だ進展が続くのが、あの遠矢の方。 彼の証言や隠れ家の情報より、芋づる式に関連事件が発覚している。 警視庁の各強行犯に属する計8班は、絶えず特別合同捜査本部にて捜査に携わり、その派生的に発覚する事件を担当して居た。 また、其処には知能犯罪を扱う捜査二課、本部長直轄の組織対策室の捜査員も加わり、捜査員だけでも200人体制の大掛かりな捜査が展開していた。 警察の宿敵と云える二人の対照的な被疑者のことを思い、物思いに耽る篠田班の面々。 和菓子の甘さとその余韻が、一時的な追憶の時間へと皆をいざなった。 だが、庶務課の望月主任が突然に訪れたのは、そんな物憂げな静寂を破る様にして。 「失礼、入るぞ」 部屋に彼が現れる。 「あ、望月主任」 気付いた篠田班長が、何事かと席を立てば…。 和菓子タイムの一時を過ごす篠田班の面々を見る望月主任だが、以前の憮然にして顰めっ面と云う顔でも無く。 「一課長の差し入れか、俺も後で頂こうと思ってる」 頷いた木葉刑事は、最も間近に居た為に。 「どうかしましたか?」 彼に問えば。
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