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「皆さん、まさか・・とは思いますが。 私が出産して、子供を連れて来た・・・と、でも?」
8名の頭に浮かんだ事を代弁する郷田管理官は、次第に笑みを浮かべると。
「御質問が在るのならば、お伺いしますわよ」
余裕の不敵さを纏って言って来る。
一方、郷田管理官の周りに居る若い庶務課の女性職員達は、そのやり取りを見聞きして押し殺しながらも笑い始める。
然し、郷田管理官の向こうには、簡易テーブルに向かって立っている、‘歯抜けの狸’みたいなジサマ。 鑑識班班長の〔進藤〕鑑識員が立って居る。
木葉刑事は、篠田班長と里谷刑事の間から。
「あの~郷田管理官。 我々が呼ばれた理由は、その赤ちゃんに在るンですか?」
と、投げ掛けるならば。
何かを見る進藤鑑識員が、
「その通りだよ~。 何せ、警視庁の最寄り駅、桜田門駅に捨てられた子供だからな~」
進藤鑑識員の話から篠田班の全員が動いて、それぞれ赤ちゃんを見てから進藤鑑識員の見るものを囲んだ。 赤ちゃんの着ていた服。 入れられて居た大型サイズの菓子箱。 その箱が入れられていたと云う白黒のチェック柄の紙袋に。 赤ちゃんの服の替えや紙オムツまで…。
遺留品とも云うべきものを見回す木葉刑事は、
「で、発見者は?」
進藤班長に問うと。
赤ちゃんを抱える郷田管理官が。
「発見者は、ウチの刑事部長よ」
と、言った。
篠田班の全員が、また驚いて郷田管理官を見返す。
赤ちゃんを抱く郷田管理官から、
「今日、刑事部長は朝に私用が有ったらしく、遅れて出勤する予定だったみたい。 地下鉄で駅まで来ては、昨夜にコインロッカーへ預けた荷物を取りに行ったら、赤ちゃんの泣き声を聴いたらしいわ」
“何で刑事部長が、コインロッカーに荷物を預けるハメに成ったのか?”
強烈な疑問だが、事件には関係ないので言わない8名。
ぐずる赤ちゃんを抱える郷田管理官は、木葉刑事を見て。
「刑事部長から直々に、篠田班へこの事件を宛てがう様に言われたわ。 この〔瞳〕ちゃんは、児童保護として施設が預かってくれるけど。 遺棄した馬鹿な母親を捜して頂戴」
こう言って来る。
一課の担当する事件らしからぬことで、面食らった篠田班長。
処が、だ。
赤子の為に残されたものを見る木葉刑事は、顔を次第に真剣なものへと変えながら。
「確かに、早く捜して真意を聴く必要が有る・・かも知れませんね」
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