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「いや、俺今年で30になったんです。それで母親が心配しちゃって。まぁ、そりゃそうですよね。いい年してまだ平社員だし、俺の上司って年下の後輩だった奴だし、恋人もいないし、毎日酒飲んで週末はギャンブルだもの。まだ借金はしてないけどもらった給料みんな使っちゃうから貯金も無い。それで母親にアンタはおかしい!何度言ってもわからない!病院で見てもらってこい!って。はは、ははは…なんか、すみません。ひやかしみたいで」
「ほうほう、なるほどねぇ」
そう言って俺を見る初老の医師に俺は情けない愛想笑いを浮かべた。
早く帰りたいなぁ。
俺を心配した母親からの懇願で心療内科に来てみたけれど、どうにも居心地が悪い。
ちょっと変わった先生だけど腕はいいらしいのよ、なんて言ってたけど、本人にやる気がないのだから無理だろう。
でも、まあいい。とりあえず母親の希望通り病院に行ったという実績があれば、しばらくは静かにしてくれるだろう。
そりゃ俺だって、このままじゃいけないとは思うよ。
けど…やめられないんだ。
母親が言うにはそれが依存症だって、このままじゃ結婚だってできないよって言うけど、借金している訳じゃないんだし、それに俺に恋人がいないのは多分、酒やタバコ、ギャンブル以前の問題だ。
だって、俺…全身毛むくじゃらでヒグマみたいな親父にそっくりだろ?
昔から女の子にモテた事はないんだ。
だから、その辺は諦めてくれ…
「だいたいのお話はわかりました。では、次に別室で心と行動のチェックシートを受けてもらっていいかな?けっこうたくさんの問題がでるけど気楽にね。直感で答えてくれたらいいから。それが終わったら声かけてください」
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