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「大丈夫ですよ。バカバカしいと思われるかもしれませんが、騙されたと思ってこの子と暮らしてみてください。それですべてが解決しますから。あなたは、ご自身が思っているより忍耐強い方です。待合室でも二時間待ってらしたじゃないですか。私達はずっと見てました。きっと、待合室を離れている間に呼ばれたら、私に悪いなと思ったのでしょう?猫を飼うには忍耐力が必要です。なにせ気まぐれですから。あなたなら大丈夫ですよ」
もしかして二時間も待たせたのは、わざとだったのか?俺を試していたのか?
そう思ったら無性に腹が立ってきた。
ふざけるな!馬鹿にするのもいい加減にしろ!
だめだ、これ以上ここにいたら、俺は口汚く怒鳴ってしまうかもしれない。
金を払ってすぐに帰ろう。
「すんません、俺には無理です」
俺は、絞り出すようにそれだけ言うと医師に背を向けた。
「わかりました。事前に説明もなく失礼しました。あなたの治療に役立てないのなら、この子猫は外に放します。動物病院でもらってくる時に言われたんです。やっぱり飼えないから返す、はダメですよって。あぁ、かわいそうだが仕方がない」
俺は耳を疑った。
子猫を外に放す?
俺の承諾もないまま勝手に動物病院から引き取って、治療に使えないからって捨てるのか?
冗談じゃないぞ!
そんなのかわいそうじゃないか!
「ずいぶんと身勝手ですね。だったら先生が飼えばいいでしょ」
「私?私は無理ですよ。ウチには金魚がいますから」
「俺だって無理ですよ!」
とうとう我慢のできなくなった俺は、ここが病院であるという事も忘れ怒鳴ってしまった。
医師はというとしれっとそっぽを向いている。
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