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第9章 Anniversary(つづき)
「うん、ごめんね。なんか、少しホッとしたのかな。
よく、分から、ない……」
彼の広い胸で、その温もりと匂いに抱かれて
言葉尻は、勝手に途切れてしまう。
そして、そのまま彼の胸に埋まるようにして、私はすすり泣き続けた。
正直なところ、自分でも、この感情がどんなものなのかは、
よく分からなかった。
ただ、自分の中の何かが苦しげに頭をもたげ、主張するように
心の壁を叩いてくる。
それが、まるで胸を絞り、強く叩く動悸のように
私の感情を、痛くなるほど締め付けた。
そんな私がすすり泣く間、彼は、黙って私を胸に抱き、
そっと背中を摩り続けてくれた。
そしてその夜、泣き止んだ私に何かを尋ねようともせず、
彼は、横たわった私の手を握り、
寄り添うように私たちは静かに眠りについた。
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