15人が本棚に入れています
本棚に追加
「千奈美さん、赤ちゃんが出来たんですね」
ちょうど数週間前から腹帯を付けた彼女は、少し、お腹がふっくらしてきた。
だが、私の胸の内の小さな動揺は彼女にも話していない。
だから、あっけらかんと妊娠の事を彼に告げても、何も不思議はなかった。
しかし私のほうは、そうはいかなかった。
さっきまでの甘くて温かい幸福感は幻のように消え、
にわかに胸に仕舞った動揺が大きく揺れ始める。
それと同時に、微かに震えだした指先を隠すことは出来なかった。
しかし、そんな私を優しく抱きしめたまま彼は続けた。
「クリスマスの前くらいから、なんとなくナッちゃんが
何かを胸に秘めてるような気がして、ちょっと心配してたんです。
でも、これだったんですね?」
最初のコメントを投稿しよう!