第9章 Anniversary(つづき)

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「千奈美さん、赤ちゃんが出来たんですね」 ちょうど数週間前から腹帯を付けた彼女は、少し、お腹がふっくらしてきた。 だが、私の胸の内の小さな動揺は彼女にも話していない。 だから、あっけらかんと妊娠の事を彼に告げても、何も不思議はなかった。 しかし私のほうは、そうはいかなかった。 さっきまでの甘くて温かい幸福感は幻のように消え、 にわかに胸に仕舞った動揺が大きく揺れ始める。 それと同時に、微かに震えだした指先を隠すことは出来なかった。 しかし、そんな私を優しく抱きしめたまま彼は続けた。 「クリスマスの前くらいから、なんとなくナッちゃんが 何かを胸に秘めてるような気がして、ちょっと心配してたんです。 でも、これだったんですね?」
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