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「ナッちゃん、結婚してくれて、ありがとう」
「冠くんこそ、私を見付けてくれて、ありがとう」
チン――、と涼やかな音をさせてグラスを合わせ、シャンパンを一口ふくむ。
「ナッちゃん」
呟いた彼の顔がそっと近寄り、小さく唇を寄せられる。
それからグラスを置いた彼が私の目の前に小箱を持ってきて、静かに開けた。
だが私は、その中身をもう知っていた。
「僕にとって、フォルトゥーナのミルクチョコレートが、
ナッちゃんと出会わせてくれた本当のキューピッド。
だから、どうしても今日、一緒に食べたくて」
そして、長い指先で一粒を摘み上げる。
「はい、ナッちゃん」
目の前に運ばれてきたそれに、私が素直に口をあけると、
そっと小さな甘い粒が落ちてきた。
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