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目を開けると、そこは宿の廊下だった。口の中に残っているたこ焼きを慈しむように咀嚼しながら、ナターシャは部屋に戻った。
あの光さえなければ、もっとたこ焼きを堪能できただろうに。そして、あの和やかな雰囲気の中であれば、神器を譲って欲しいという交渉も円滑に行えただろうに。
つまるところ、水野が急に不機嫌にならなければ。――というか、水野は何故あんなにも不機嫌だったのだろう。マヨネーズがけのたこ焼きを食べ始めた辺りから、彼の態度が硬化していったように感じたのだが、一体どうして……。
ナターシャは口の中が空になると、舌で上顎を触った。火傷をしたみたいで、ざらざらとした感触を舌に感じた。
そしてナターシャの心にもまた、何となくざらざらとしたものが残ったのだった。
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