ピンクのカサのノスタルジア

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    誠は、ランドセルをカサがわりにして走っていったけど。  でも、誠は校門を出てすぐの場所にある、学童保育に行くって言ってた。  中条君は……どうするんだろう……?  おうち、遠いのかな……?  排水溝のといを、雨水がいきおいよく伝っている。  あたしが横に立っても、中条君は知らんぷり。  両手を、七分丈のカーゴパンツのポケットにつっこんで。グレーのランドセルを背負って。  幼稚園の子なんかと、口もききたくないのかな……? 「あ……あの……ねぇ……」  あたしはおずおずと、相手に向かって口を開いた。 「カサ、ないならさ……。あたしのカサに半分入る?」 「……え?」  琥珀色の目がしばたいて、それからあたしを見おろした。 「だ、だけど……オレと仲良くしてたら、またあいつになんか言われんじゃないの……?」 「あいつ」って、けいた君のこと。  あたしはキョロキョロと、昇降口を見まわした。  いつの間にか昇降口は空っぽになっている。一年生たちは、待っているお母さんたちの胸にとび込むようにして、さっさと帰っていったみたい。  一階の廊下の先にある二年生の教室から、国語の教科書を 読むおにいさんやおねえさんの声がきこえてくる。 「だれも見てないから……いいよ」
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