第2章 沢の向こうの森

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第2章 沢の向こうの森

沢の大きな石の上を飛び移って行く。グレイが落ちそうになったけど、案外大丈夫そうだ。沢の中は魚がひらひらと泳ぎ、たまに飛び跳ねる。蛙の卵が連なってあり、まだ小さなおたまじゃくしも見える。沢は向こう側の森と自分たちが普段入る森との間の谷から流れてきている。水の量は下流の方なので意外と多いい。川と沢の中間ぐらいだろうか。そういえば、前に聞いたことがある。この沢の名は、確か、そう、黒杉沢。黒杉が沢山生えている処から流れてきているのだそうだ。 ならば、気を付けなければ。黒杉の生えている処はとても危ない。なぜ、そうなっているのか分からないけれど、黒杉の生えている処では動物たちや植物たちが危険な物に変化すると言われている。その代表例が黒杉熊だ。黒杉熊はとても狂暴だ。食べれるか、食べれないか、関係無しに動く物を見つけると襲ってくる。どのくらい熊が走るのが速いのか知らないけれども、自分より速いことははっきりしている。大きいし、力も強い。黒杉に登って逃げても、黒杉ごとなぎ倒すか、熊自体が登ってくる。黒杉もそこまで丈夫ではない。あっさり根からぼっきりいくだろう。 黒杉は高級な物だといつか聞いたことがある。香りがよく、真っ直ぐなために加工しやすいらしい。でも、いくら勇気がある人でもそんな愚かなことはしないだろう。誰がそんなことを見つけたんだろう、すごいな。 「黒?」 何でもないよ、と首を振る。 「一番の問題は山で迷わないかということだと思うんだ。何せ沢のすぐ側を通るのは危ない。黒杉の林に当たってしまったらどうにもならないし、かといって、離れすぎると遭難してしまう。だから、少し遠目にあそこに沢があるなってぐらいで峰を上手くいけば山頂を目指そう!それでいい?」 思ったよりも考えていたんだ。驚きながらうなずくと、うっしゃっ!と満面の笑顔で歩き初める。慌てて着いていく。
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