インソムニア 2

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 男に期待を持たせ、男をだまくらかす悪女もいる。だが女に期待を持ち、騙されてもいいという男もこの世にはいる。すくなくともここに、一人いる。  彼女を守り抜く騎士のように、高らかに志を掲げ、携帯をベッドに置いて眼を閉じる。彼女のメッセージに心臓はさらに興奮し、頭には脳内麻薬物質が飛び交って火花散る。  胃の麦茶効果も消え失せ、身体は興奮の一途。やがて興奮が下半身の一部に集中し、俺は彼女を思いながら下半身に手を伸ばしかけて、はっと我に返る。  明日、俺は彼女の隣を独占する。それなのに彼女をおかずにしようとしている。言語道断だ。人間としての尊厳、とまでは言わないが、男としての沽券に関わる。それにもしも明日、俺たちの距離が急接近するような展開が待っているのなら、今日の我慢はよりよい明日の快楽へ繋がるはずだ。  夜の試みを自粛という方針に決め、この興奮をどう処理しようかと考える。悩みに悩み、ショック療法ということで、筋トレという手段を講じてみることにした。身体を動かして疲れさせ、スコンと寝てやろうというアイデアだ。  暗いままベッドを抜けだし、床に掌と足をつけて身体を伸ばす。ここで床を片付けていたことが効いてきた。いいサイクルに入っている。眠れない自分に言い聞かせる。  腕立て伏せなんて、久しぶりだな。     
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